SCENE of KIKOF #002

ー 使い方を発見していく楽しみ。田村昌紀流、KIKOFのススメ ー
駒沢の閑静な住宅地に構えられた”SEMPRE HOUSE KOMAZAWA”。今年で25周年を迎えるライフスタイルショップの草分け的な存在SEMPREの代表 田村昌紀さんのご自宅であり、SEMPREが提案する「心地よい暮らし」を体験できるショールームのような場所として、お客様をご案内することもあるそうです。このSEMPRE HOUSEのキッチンには、KIKOFのプレートやボウルが美しく並びます。「365日KIKOFを使っている」と話す田村さんに、KIKOFを愛用する理由や使い方の工夫についてお聞きしました。
田村さんのお話を映像でもご紹介します。KIKOFも並ぶ美しいキッチンの様子とともにお楽しみください。





―KIKOFとの出会いは?

元々は23年前にKIGIの二人がまだDRAFTにいた頃、SEMPREの七角形のロゴをつくっていただきました。なので、販売前のKIKOFを見せていただいた時に、この八角形のフォルムにSEMPREのロゴと通ずるものを感じ、絶対にお店で取り扱いたいと思いました。

SEMPREのロゴデザイン

―KIKOFのどのあたりが気に入っていますか?

まずデザインとして美しいというのは当然あるんですが、少し時間をかけて使いこなすようになって、本当の魅力に気づいていきました。KIKOFは食器の伝統的なセオリーからは外れています。例えばKIKOFのボウルの底面はフラットになっていますが、一般的なスープ皿には台がついています。手に取った時もサーブする時も、台がないと熱いからです。またプレートは、高さが低く限りなくフラットに近い形です。スープやソースの多い料理を入れると、こぼれやすそうな不安を感じるかもしれません。


―それでも365日使っていただいているというのは、どのような発見があったのでしょうか?

食器には陶芸家やメーカーが実用性を考え優先させてきた伝統があります。KIKOFはオーセンティックな使い方からすると、多少配慮が足りない部分があるかもしれない。ただ、熱くないようにボウルに台をつけてしまうと、KIKOFのデザインは成り立たない。私は日々KIKOFを使う中で、次第に他の食器にはない機能性や使い方がわかってきました。まずこの薄さですね。私の食器棚を見ていただくと、来客用に8名分の食器が収納されています。KIKOFの薄さだからこれだけコンパクトに済むのです。他の食器であれば、8名分の量はすごいことになってしまいます。使ってみていろいろな発見があるのです。

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友人や知人を招いたホームパーティーでは、自ら料理をふるまう事も多いという田村さん。アクアパッツァのような本格的な料理もお手のもの。慣れた手つきでオーディエンスを魅了する。最後の仕上げまで調味料を一切使わず、オリーブオイルをたっぷり入れるのがアクアパッツァを美味しく仕上げる秘訣とか。

―薄さ以外にはいかがですか?

薄さと同時に気に入っているのは、どんな料理にも合わせやすいということです。日本は、日常的に食べる食のジャンルが実に広い。和食からイタリアン、中華、他のアジアや時にはペルシャや中東の料理まで、KIKOFはどんなジャンルを乗せても違和感がないのです。一回の食事の中でも、特に人をもてなす時など、いろいろなジャンルの料理を用意することがあります。スタートは和食でも、途中からイタリアンや中華も登場する。その度に食器を変えることなく、ニュートラルに合わせられる使いやすさがあります。

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田村さんのお気に入りはMoon night(グレー)。
「肉、魚、グリーン系も、どんな食材を置いても美味しそうに見える。家の素材がコンクリートが多いので、インテリアとも調和しやすい。差し色として濃い色と並べたくなる。ブラウンがあったらいいなあ」

―特に気に入っている種類はありますか?

一番よく使うのは大皿です。大勢で取り分けて食べる時に使うのはもちろんですが、実は一人用のお皿としても使っています。普通に考えれば大きすぎるのですが、大皿にはプレートの中をコーディネートする楽しさがあります。大皿だからたくさん乗せるのではなく、例えば端に目玉焼きを乗せて、残りのスペースにサラダを美しく飾る。少し余白があってもいいのです。普通の大きさのお皿に、それらを乗せても何も面白くありません。大皿の広い空間を上手に使うことで、味だけでなくヴィジュアルも楽しむことができます。

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―テーブルセッティングならぬフードセッティングですね

テーブルセッティングの面白さもありますよ。八角形の大小のお皿をどう組み合わせて並べるか。この形がリズムをつくりやすくなっているんですね。小皿をたくさん並べても楽しいし、ボウルとプレートの組み合わせもメリハリがついて面白い。食べるためだけでなく、食卓を美しくして楽しめる食器。丸いお皿だけでは生まれない風景です。


―ニュートラルだからこそ、使い手が工夫して発見したり、楽しめる

はい。最初に挙げた、底面に台がなくて熱いという点も、マットを敷いたり工夫はいくらでもできるんですね。ではマットはどういうものを使うのか。そういった工夫を楽しめる人に向いている食器かもしれません。私がお話ししてきたようなことは、もしかしたらデザイナーが最初から意図していたことではないかもしれない。平面から立体の展開への純粋な興味があって、生まれたデザイン。実用の経験やリサーチから生まれたものでないからこそ、伝統的な作法や機能とは無縁で、新しい使い方や個人の工夫の余地が生まれる。それがKIKOFの魅力だと思っています。

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―KIKOFと一緒に使うおすすめのカラトリーを教えてください

SEMPREでも取り扱っていますが、KuraというブランドのSTIIK(スティック)という箸や、燕三条のカラトリーSUGATA(スガタ)、ポルトガルのクチポールというブランドのGAOシリーズなどと合わせますね。クチポールは家族経営の小さなメーカーでしたが、現在では世界中の高級レストランやホテルで使用されています。こういったインターナショナルで使われている食器、実はなかなかないです。和にしても中華にしても、その匂いが強すぎると世界には広がりにくい。KIKOFの持つニュートラルさは、クチポールのように海外のマーケットに広く受け入れられる可能性があると思っています。

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和洋が混在する現代の食事シーンに、カラトリーと一緒に並べて美しくなじむことを意識したSTIIK。KIKOFのMoon night(グレー)の色合いとよく合う。木の枝を切っただけの箸置きと一緒に。
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金属製品の質感をそこなうことなく特殊マット処理が施された美しいカラトリーSUGATA。装飾のない素の佇まいがKIKOFによくなじむ。

―食文化の融合が進んでいる

例えばデンマークとか、シンガポール、香港、東京もそうですが、ジャンルがミックスされた食の文化がどんどん出てきている。デザインが非常にシンプルで基本形。和洋中華の伝統的な様式に則ることなくニュートラルにつくっているから、新しい分野、世界に通用するような位置にいる。KIKOFは、これからの時代に合ってくる食卓のツールじゃないかなと思いますね。

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田村昌紀(たむら まさとし)
1944年兵庫県芦屋市生まれ。武蔵野美術大学工業デザイン科卒業後、米国ミシガン州クランブルッグ アカデミー オブ アート卒。サンドバーグフェラー工業デザイン事務所勤務。帰国後、田村デザイン事務所設立。1996年株式会社センプレデザイン設立。LIFESTYLE SHOP SEMPREの運営を中心にショップ、デザイン、スタジオ業務を行う。


田村さんも愛用する「Moon night(グレー)」のカラー。琵琶湖の月夜の湖面に映る色をイメージしており、深いグレーの色合いは、さまざまな食卓や料理を包み込むような落ち着きがあります。プレートからフラワーベースまで、幅広いラインナップをぜひご覧ください。